たけしの陰謀番組 2005-01-03 09:31:49

 昨日、たけしが司会の”昭和の陰謀を暴く”趣旨の番組をやっていた。万踏みをそのまま鵜呑みにする人も多いだろう。やっている内容はちょっと社会情勢の裏面に関心がある人ならば大抵知っている仮説ばかりだ。
 私としてはそれなりに面白かった。自分でこれらの仮説の信憑性をどの程度におくか。客観的に妥当する信憑性と、私的な信憑性の二重基準を認めるべきか、と考えながら見たからだ。

 こういうものは結局自分の力では真偽を突き止めようがない。全て”仮説”として受け止めるべきものだ。しかしその仮説を知ることでいろいろ視野が広がることも事実である。

 考えてみれば東欧の社会主義国はずっとソ連に占領統治されていたわけでなく、一応主権を持った国家として存続していたが、実際に大事なことはクレムリンからの指示で動いていたはずだ。日本や韓国はそういう東欧諸国と同じ状況にあるのだ。

 しかし日本や韓国で成功した衛星国を作る手法もイラクで成功するだろうか。日本にくれべれば、はるかにイラク人の抵抗のほうが激しいのは事実だ。しかし、日本はアメリカと何年も死力を尽くして戦った挙句原爆を落とされたという経験があったが、イラク人は砂漠のほうでちょこっと戦って負けて、首都もあくまで通常火力で奪取されたわけだから、アメリカにまだまだ抵抗できると錯覚するものやむをえないかも知れぬ。やはり原爆を落とせば、イラク人も言うことを聞くのではないか。

10chはここ数年、陰謀史観の番組を作り続けている。昔は宇宙人ものが多かったが、最近はアポロは月に行っていない、9.11は謀略だとか、今回の番組とか。

 私はペンギンさんに副島隆彦氏のホームページを紹介されてそういう社会の裏面に関心を持つようになった。実際に副島氏の著作の影響が、最近のゴルゴ13や10chに露骨に表れていると思われる。私が知らないだけで副島氏のような意見を述べている人が他にもいるのかも知れないが。

 最初はその陰謀説にはそれほど驚かなかったが、僕が幼少から楽しく読んできた「ムー」や「ゴルゴ13」のようなことを本気で信じて、日本を陰謀から救うべく戦っている副島氏や彼の読者がいるということに衝撃を感じた。

 最近では彼らの影響を受けて僕のほうも世の中の見方が変わってきた。具体的にその説を信じているわけではないが、そういう感受性が移ってきた。テレビにキッシンジャーが出てくるともう得体の知れない妖怪のように感じてしまうし、妙な流行があると、誰かが仕組んでいるんではないかとつい考えてしまう。

 幽霊は信じていないのに、怖い映画を見たあと怖くてトイレや風呂に入れないのと同じである。

 それで思い出したのが、「ここがヘンだよ日本人」という番組である外国人が言っていた言葉だ。多分インドかパキスタンかどちらかの人で、両国の紛争が何故終わらないのか、というテーマだったと思う。彼は「あまり歴史は子供に教えないほうがいい。なぜなら歴史を学べば学ぶほど、相手を殺したくなってくる。」

 なるほどそういうものかと思った。その人は理性では相手の国の人々は、決して鬼でもないし悪でもないと解っているようだったが、それでも相手国への憎しみが消えないので苦しんでいるようだった。人間の理性など感情には勝てない。感情は理性のコントロールの利かないところで徐々に誘導されていく。

 幽霊が怖いとか、この事件の裏に何かあると信じる事自体はそれほどは害がない。実際に幽霊や幽霊に見間違うような自然現象があるかもしれないし、実際に事件で黒幕や思いもよらぬ原因があることはありうるからだ。問題はそれがカルトや、人種差別などと結びついて一つの世界観となっていくことである。

 こういうものにあまり熱中するべきではないのかも知れぬ。