二つの特別



全員に公開



一人あたり、2〜3万という、そこそこいただいているホテルというサービス業にいる自分にとって、いささか考えさせられる内容だったので、自分なりに思い浮かんだ事を書いておきたい。

元になったブログはこれ。はてなブックマークなどで検索すると、おびただしい数のブロガーたちのコメントがひっかかります。

http://www.enpitu.ne.jp/usr6/bin/day?id=60769&pg=2009...


言わずもがなですが、よしもとばななさんを批判するとか、この個別のケースのよしあしを論じるつもりは無いんです。(だって元の本を読まないと本当のことってわかりませんものね。)


飲食業では基本的には飲食物の持ち込みはご法度です。

バイトの人はどうして持ち込みを許可したのか。

ここで律儀に店長にお客様の要望を伝えて怒られて、お客さんと店長の板ばさみになるよりは、こそっとグラスだけだして(もうすぐ帰りそうだし)穏便に済ませようとしたら、アタマの硬い店長に見つかってしまった、という事なんじゃないかと思います。

多分、読んでいる多くの人が不快なのが、よしもとばななさんが、自分たちは貴様らと違う上の世界の人間だよ。それに媚売るのがお前らのチャンスなのに、それをしないとはダメな奴だな、という態度だとおもいます。


上流ぶりたいなら、それなりの格式の店にいって、チェーンの居酒屋なんかで特別扱いを強要しないで欲しい。私はそう率直に思いました。そして、この人たちはきっと独特の「自分たちは偉い」という雰囲気をアピールしていたんだとおもいます。

自分が店長なら、こういう自分が偉いと勘違いしているお客さんが一番やっかい(どんどん図に乗ってわがままを繰り返してくる)と思って、わざとマニュアル人間、相手の社会的地位が読み取れないアホを演じて、拒絶するだろう思いました。


よしもとばななさんは、自分に媚びるのが、お前のサクセスのチャンスとのたまっていますが、よしもとさんのおかげでどれだけチェーンの居酒屋にお客が入る事になるのか、まったく意味不明です。こういうのは本屋時代、ホテル時代もたくさんいた、迷惑なお客さんの典型的な思考パターンです。


あるいは、まあ、今回に限りと強調して、相手に不快感を与えつつ(そうしないと図に乗ってまた無理難題を言ってくるかもしれないから)、今回のわがままだけを見逃すかもしれないですが。100%素直にルール違反を許すというのは、店長として(チェーンの居酒屋ですよ)ありえないだろうと思います。

とここまで書いてきて、サービス業として、やっぱり自分の考えは向いていないのかもしれないな〜とも思いました。



リッツカールトンの本に書いてあるような、どこまでお客様の要望にこたえるか、あるいはそれを上回ってサプライズさせるか、という仕事に憧れもありますが、通常のサービス業は限界があります。


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その限界をどうにかしたい!と思わせる「特別な客」というのも確かにいるんです。

それは、「俺のサクセスにつながるから、このグレードの高い特別な方にサービスしたい」というのではありません。すみません、よしもとさんが知っているという「いいときの日本」なんざ○○くらえでございます。





ホテルなら、ごくありふれた家族が、定年退職したお父さんの為に奮発して泊まりに来てくださったり、じいちゃん、ばあちゃんの長寿を祝って親族が集まったり・・・そういう人たちには多少でも無理したくなるのが人情です。

本屋時代であれば「私はニホン大好きで〜す。時代劇ビデオたくさんみました。金さん、暴れん坊ショー軍、特にファイヤマン(火消しのことらしい)大好きで〜す」という外国人がいたら、できるだけ彼の探している時代劇の写真集をみつけてあげたいという気持ちになります。残念ながら、め組とかのファイヤマンの写真集は、お店にありませんでしたが(笑)

病院のそばの医学書専門店にいたとき、真っ青な顔をした中年女性が飛び込んできて、たったいまガンを宣告された、ガンの勉強をしたいから本を紹介してくれといわれた時は、わからないなりにこっちも本気で調べた思い出もあります。





例の店長がどうだったのかわかりませんが自分なら、そのワインが、皆の気持ちの上でどう「特別」なのかを説明してもらえれば、こそこそ隠しのみしようとしたり、逆に偉ぶった態度で押し通そうとしたりしなければ、自分が店長なら快くOKしたかと思います。


それが正しい判断かは別にして(またグレード高い人にサービスしてチャンスをつかむという処世術を否定するつもりも全然無いですが)、よしもとさんがアピールするような意味の「特別」じゃなく、「海外に行ってしまう人が持ってきた私たちにとってはこれしかないという特別なワイン」のような特別さを大事にする人間でいたいな。

今後サービス業に就くかどうかわかりませんが、そういう思いがこみ上げてきたので書いておきます。