諸葛孔明と一休さん

 ロールモデル思考とは何か

ウェブ時代をゆく梅田望夫 ちくま新書 119〜120pから

「好きなこと」「向いたこと」とは何かと漠然と自分に問い続けても、すぐに煮詰まってしまう。頭の中のもやもやは容易に晴れない。ロールモデル思考法とは、その答えを外界に求める。直感を信じるところから始まる。外界の膨大な情報に身をさらし、直感で「ロールモデル(お手本)」を選び続ける。たった一人の人物をロールモデルとして選び盲信するのではなく、「ある人の生き方のある部分」「ある仕事に流れるこんな時間」「誰かの時間の使い方」「誰かの生活の場面」など、人生のありとあらゆる局面に関するたくさんの情報の中から、自分と波長の合うロールモデルを丁寧に収拾するのである。

そしてそれは実在の人物であるとも限らないと梅田さんは言い、シャーロック・ホームズを自身のロールモデルの一つとして紹介している。

 わたくしの幼少期のロールモデル諸葛孔明一休さん

さて、ひるがえってわたくしはどうか。あえて実在ではない人物をピックアップしてみると、幼少期に見ていたテレビ番組のキャラクターが思い浮かぶ。NHKの人形劇「三国志」の諸葛孔明とアニメ「一休さん」の主人公の一休さんである。

それが現在のわたくしにとってどれほどの意味を持つかはわからないが、幼少期のわたくしが彼らにあこがれていたのは確かである。

諸葛孔明は軍師兼行政の長である。軍事、行政のコンサルティング(経営者は劉備)といえよう。

一休さんは少年でありながら時の最高権力者の将軍様さえ一目おく知恵者である。いずれも現代の用語で言えば、経営者というよりは、経営者を頭脳で補佐する「コンサルティング」に相当するだろう。

一般的に、格闘能力に優れた主人公にあこがれる少年は多いだろうが、諸葛孔明一休さんにあこがれる少年は少ないのではないか。だとすれば、ここにわたくしの個性がリンクしている可能性が高い。それではコンサルティング的な生き方をわたくしは志向すべきなのだろうか?

 表層から深層へ

それではコンサルティング的な仕事にわたくしが憧れているのか。憧れていないわけではない。現に、わたくしは著名な経営コンサルタント大前研一氏が解説したSNS、「AGORIA」に参加している。彼の著作も読んでいる。

あるいはピーター・ドラッカーを深く尊敬し、彼の著作を読んでいたりする。

しかしながら、コンサルタントそのものを目指そうという気持ちはあまりない。何故だろうか?

先に引用した梅田さんは、愛読書のシャーロック・ホームズの「私立探偵」という職業そのものよりも「専門性を人から信頼され、仕事を依頼されればすごく忙しいが、暇なときはものすごく暇」(原文そのままの引用ではない)なあり方に惹かれていると気づいたという。

おそらくわたくしも、コンサルティングという職業ではなく、もっと本質的な部分で諸葛孔明一休さんに憧れていたはずだ。

両者の共通点を抜きだしてみる。

■二人とも、体力や実務能力は乏しいが、その頭脳によって人々から信頼され尊敬されている。

■そこから派生して、傲慢/いやみな奴と思われることも多い。実際に基本的に二人とも偉そうである。

■経営者そのものではなく、あくまで口だけを出す。

こうして抜き出してみると、自ら認めるのは恥ずかしい限りだが自分の知力によって傲慢に振舞いたいという幼少期の自分の欲望がはっきりと見て取れる。

ざっとこれだけ抜き出してみても、相変わらず何故コンサルティングそのものには関心がないのか、などは見えてこない。さらにあれこれ吟味していく必要がある。

今日の記事はロールモデル探しの一つのきっかけに過ぎないということだ。