猫を飼いだした知人、大山のぶ代、

at 2004 06/09 23:13 編集

最近知り合いの人が子猫を
二匹飼いだした。
うらやましい。

ぜんぜん話は関係ないが、
その人は声がとてもきれいで、
横で聞いているといい気分になる。

童話とか小説の朗読に向いている
気がする。こういうのは
ほとんど生まれつきというか、
努力によっていかんともしがたい
ものがあるから、うらやましい。

まったく話は変わるが、とても
個性的ですばらしい女優、声優の
大山のぶ代氏が以前テレビで
語られた話が忘れられない。

大山さんは元来明るくて、
おしゃべりなほうだったのだが、
自分の声が個性的であるということ
には全然自覚がなかった。
中学生になったある日、同級生から
そのことをからかわれ、
人前で声を出すのが嫌になってしまって、
性格が暗い少女になってしまった。

「そんな私を見て、多分いつかこういう
日が来ると思っていたんでしょうね。
母が、私の悩みを聞いて、こう言ったん
です。『あなたねえ、そんなに馬鹿な子
だとは思わなかったわ。人間は
駄目だからって使わなければ
どんどん衰えてもっと駄目になって
いくのよ。声で悩んでいるなら、
もっともっと使わなきゃ駄目じゃないの。』そして私は目が覚めたように
なって、声をもっと使おうと
思って、放送委員になったんです。」

大山さんが始めて校内放送で
しゃべったとき、それを
きいた同級生たちが大山さんに
「忠告」しにきた。
お前みたいな変な声がしゃべるのは、
クラスの恥だから辞めてほしい。

変な声だとからかうならともかく、
クラスの恥だとか、もっともらしい
ことをいって、いじめやからかいでは
なく、「みんなのため」の忠告
めいた言い方をする中学生というのも、
非常に不愉快だが、もちろん、大山
さんはもうそんな連中には負けなかった。

本来人前で話すことが好きであり、
大山さんは何を言われても校内放送を
がんばったという。

その内に誰も批判めいたことは言わなく
なったという。

もちろん、その後の人生は
いろんな転換点があっただろうが、
今の大山さんにつながる第一歩が
大山さんの母の、一言だったという。

もし自分が大山さんの同級生で
彼女を励まそうとしても、
彼女の母親のような機転の利いた
言葉はかけられそうにない。

自分には子供はいないが、
そういうことのできる人になりたい、
と強く感じた。

話が変わるが、突き放してみたり、
受け入れたり、教え伸ばしたり、
そういったことをできる人は
すばらしいと思う。

「有徳の人」というものは
しかめつらしいモラリストではなく、
そういう一見普通の人に見えるが
どこか深みのある人なのだろう。

竹本健治の「ウロボロスの基礎論」
という小説に、実在するのか
フィクションだからわからないが、
非常に手厳しい評論をするので
あちこちで嫌われている評論家
という人が出てくる。

きちんと筋を通して批判すべきを批判
しているというのなら聞こえはいいが、
結局彼は何をしているのだろうと
私は感じた。

彼の批判が正しいとしても
批判された作家は感情を害して
彼の言うことを受け取らないだろう。
彼の批判によって彼の思うように
ミステリ界がよりよい方向に
変わることは実際的にはありえず、
彼の悪名だけが高くなる。

彼は自分自身ではきちんとなすべきことを
している自己満足が生まれるだろうが、
彼の本来の目的であるミステリ界の
向上は微塵も果たされない。

自分は正しいということに
凝り固まって、世の中を
うまく生きていけないことを
自分の正しさの証拠にして
楽しんでいく生き方。

就職せずにフリーターを
している今の自分にとって、
だんだんとそういう人になって
しまう可能性が高い。

そういう人にならないために、
やはり人の批判は、一定の
限度を設けるべきだろう。

倫理やルールというものは
あくあまで生きていくための方便
に過ぎない。

それによっかかって生きることは、
どこか逆転した生き方だろう。

でも逆転して何がいけないのか、
という気もする。

自分勝手な倫理観に従って生きるのと、
たとえば自分を犠牲にするキリストの
精神に殉じたコルベ神父と、何が
違うのか。

空手にすべてをささげたマス・オーヤマと
尊師の言うとおりにサリンをばら撒いた
腐った連中と、何が違うのか。

明らかに違う。違うのだが、
それはキリスト教は広く
価値を認められたものであり、
自分勝手な倫理観は誰も
賛成してくれないから違うのか。
あるいは空手は実際に
すばらしいものであり、
尊師がいかさまであったからか。

自分がそれにすべてをなげうった
対象が価値あるのか価値がないかの
違いに過ぎないのか。

そうだ、と言いたい気もする。

だが、それだけの違いなのか、という
気もする。

・・・・・今日は空手バカ一代
買ったからよけい熱く書き込んで
しまった。

結論は例によって出ない。
生き恥をさらし、冥府魔道を
突き進む中で、ひょっとしたら
何かわかってくるやも知れぬ。